崎谷満氏の著書の中のある記述について

「DNAが解き明かす日本人の系譜」(勉誠出版
p92に以下のような記述がある

「Karafet et al.(2001)によると、
 チベットでは、D1系統が16%、D2系統が33% 
 の合計49%もが、D系統に含まれる」

この記述は、現在では誤りである。

上記のKarafet等の論文とは
"Paternal Population History of East Asia: Sources, Patterns, and Microevolutionary Processes"
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1235490/
であるが、よく読むと
Table1で、チベット人の75人のサンプル中、25人がh11、12人がh12に属する
とあり
Figure2で、h12がM15(D1)、h11はM174(D)のうち、M15(D1)以外のもの
と表記されている。

崎谷氏は、DからD1を除いた残りをD2だと思い込んだらしい。
しかしながら、現在では、チベット人のハプログループDのメンバーのうち
D1以外は、D3なるサブグループに属していることがわかっている。

実は崎谷氏は、同様の思い込みをハプログループCに関しても行っている。
p78
「なお表5−3の亜型C*(xC2,C3,C-390.1del,C-M210)には、C*祖型およびC1系統が含まれる。・・・この系統がC*祖型なのかC1系統なのかは確かめられていないが、C*祖形のような・・・希なものよりはC1系統である可能性が高いと思われる」
p78では推測であることが明記されているが、p92は明らかに断定して書いているので、推測という意識もなかったようである。

現在、ネットで検索したかぎり、下記の箇所において、
崎谷氏の上の記述の引用が確認された。

http://www.k2.dion.ne.jp/~yohane/000000sekaiidennsi1.htm
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=184406
http://bj.explore.ne.jp/yorozu/66997_1.html
http://c.2ch.net/test/-/archeology/1135786435/147

また、以下の箇所では、D2とあったところがD3に変わっている。
私は確認していないが、後の版では記述がD3に直っているかもしれない。
(追記:後に出た「DNAでたどる日本人10万年の旅」(昭和堂
では
チベットではD3系統(33%)およびD1系統(16%)に高い集積がみられ、日本列島となんらかの関係をしめしている」(p20)
「D2系統は日本列島のみに特異的にみられる」(p22)
と、先の著書の記述を変更したものになっていた。)

http://www.jinruisi.net/bbs/bbs.php?i=200&c=400&m=184229
http://academy6.2ch.net/test/read.cgi/archeology/1135786435/l50
http://sicambre.at.webry.info/200804/article_11.html