日本人、琉球人、アイヌの遺伝的近縁性

すでに先月のニュースですが・・・

【プレスリリース】日本列島3人類集団の遺伝的近縁性(総合研究大学院大学
http://www.soken.ac.jp/news_all/2719.html

論文が出たもようです。

The history of human populations in the Japanese Archipelago inferred from genome-wide SNP data with a special reference to the Ainu and the Ryukyuan populations

http://www.nature.com/jhg/journal/vaop/ncurrent/abs/jhg2012114a.html

Admixture Chartを見る限り、琉球人、日本人の遺伝子で
アイヌと共通するものは、他の東アジアの人々に比して多い
とはいえ、半分も占めていないことがわかると思います。

SNPに関して

日本人のガラパゴス的民族性の起源
http://galapagojp.exblog.jp/

上記HPは、Y-DNAに関する数々のデータを紹介している有用なものですが
SNPに関しては、誤解が見受けられます。

例えば
「…日本列島で1万年間交配しあい、
 それぞれ子亜型に分化したため、
 日本列島独自のY-DNAハプロタイプが分化し、」
「日本列島上陸後1500年は経っているにもかかわらず、
 日本列島独自の子亜型が全く存在せず、
 中国大陸にあるそのままの子亜型のみしか検出されません。
 つまり支配階級はエリート層として
 縄文−弥生集団を見下し差別し
 交配を進めてこなかったことを
 如実に物語っています。」
といった点です。

上記の文章で亜型といっているのはSNPのことです。
SNP(Single Nucleotide Polymorphism)というのは
DNAの塩基配列の1つが変異したものです。

まず、第一にY-DNAのSNPは突然変異によって生じるのであって
交配によって生じるものではありません。

次にO3,O2b,D2の各グループに関してですが
O3に関しては、日本国内で新たなSNPが出来ている
可能性ももちろんあります。単に調べていないだけです。
(但し突然変異は確率的に生じるので、時間が短ければ
 当然変異が生じる可能性は小さくなります。)
O2bからO2b1への分化についても、O2b1が朝鮮半島でも
数%見られることから朝鮮半島で誕生した可能性が高く、
単に日本において増加が見られたと考えるのが自然です。
(日本国内でのO2b1の変化の度合いが小さいことも
 このような考えを裏付けるものです)
D2からD2a,D2a1への分化について、D2a1がアイヌ
16人中1人しか見つからない件については、
アイヌの人口減少により、D2a1の人が減ってしまった
と考えたほうがいいでしょう。

FTDNA D Haplogroup (Y-DNA) Project

お久しぶりです。

更新をサボってる間に、いろいろ進んでるようで。

FTDNAのJapan DNA Project
http://www.familytreedna.com/public/japan/
は参加者が増えまして、日本人もしくはその関係者は
22名になっております。

また今年3月にはハプログループDのプロジェクトも出来たようです。
http://www.familytreedna.com/public/Dhaplogroup/

半数以上は日本のD2の方々ですが、他にも
中国・カザフスタンのD1の方々や
フィリピンのD*の方などいらっしゃいます。
(D*の方はM15-, M64.1-, P99- なので
 D1、D2、D3のいずれでもありません。)

ところでFTDNAに加入されていれば、
HaploTreeのところで、サブグループを決める
SNPの調査を申し込めます(当然有料ですが。)

なぜわざわざこんなことを書くかというと
ハプログループDのプロジェクトのメンバーの中にも
まだサブグループが未確定の方がいらっしゃるので。

ちなみにハプログループOの方のプロジェクトはこちら
http://www.familytreedna.com/public/o3/
元はO3のプロジェクトだったようですが、
今はO全体に範囲を広げたようです。

世界一受けたい授業 

遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。

「DNAで一瞬でわかるアナタのルーツ!!」(2011/1/8放送)
http://www.ntv.co.jp/sekaju/onair/110108/05.html

主にミトコンドリアDNAの話で、
Y染色体の解析は司会の三人のみでした。

し・か・も、D2は一人もおらず。

この企画、実は二回目で、一回目は去年の夏に放送されたそうです。

「DNAで一瞬でわかるアナタのルーツ!!」(2010/7/10放送)
http://www.ntv.co.jp/sekaju/onair/100710/03.html

中国におけるF(xK)、K(xNO、xP)、P系統

アフリカから中国への旅路=中国人の祖先はどのルートをたどったのか―中国紙」

2010年10月12日、光明日報は記事「中国科学者が明かす=中国人の祖先はどのようにしてアフリカから東アジアにやってきたのか」を掲載した。

人類分子遺伝学の研究は、人類発祥の地がアフリカであるとの学説を支持している。では中国人の先祖はどのような道をたどって東アジアにやってきたのか。中国科学院遺伝・発育生物学研究所の馬潤林(マー・ルンリン)研究員、中国科学院昆明動物研究所の宿兵(スー・ビン)研究員らは、東アジア地区の遺伝子サンプル調査を実施。Y染色体の変異を調べることで問題の答えを導き出した。

当初、アラビア半島から南アジアを抜ける南ルートが有力とみられていた。しかし、調査の結果、長江を境に南方人と北方人には明らかな違いがあることが判明。北方人には中央アジアと欧州の人々と同じ遺伝信号が残されていたことから、アフリカから地中海を抜け、そこから東の中央アジアと西の欧州へと分かれた北ルート説が浮上した。最終的に調査対象者の93%は南ルートで移動してきた人々の子孫、7%が北ルートの人々の子孫と判明したという。

    • -

上記の記事はおそらく以下の論文の紹介。

Extended Y-chromosome investigation suggests post-Glacial migrations of modern humans into East Asia via the northern route

Hua Zhong, Hong Shi, Xue-Bin Qi, Zi-Yuan Duan, Ping-Ping Tan, Li Jin, Bing Su and Runlin Z. Ma

http://mbe.oxfordjournals.org/content/early/2010/09/13/molbev.msq247?rss=1

Abstract

Genetic diversity data, from Y chromosome and mitochondrial DNA as well as recent genome-wide autosomal SNPs, suggested that mainland Southeast Asia was the major geographic source of East Asian populations. However, these studies also detected Central-South Asia- and/or West Eurasia-related genetic components in East Asia, implying either recent population admixture or ancient migrations via the proposed northern route. To trace the time period and geographic source of these Central-South Asia- and West Eurasia-related genetic components, we sampled 3,826 males (116 populations from China and one population from South Korea) and performed high-resolution genotyping according to the well-resolved Y-chromosome phylogeny. Our data, in combination with the published East Asian Y-haplogroup data, show that there are four dominant haplogroups (accounting for 92.87% of the East Asian Y chromosomes), O-M175, D-M174, C-M130 (not including C5-M356) and N-M231, in both southern and northern East Asian populations, which is consistent with the proposed southern route of modern human origin in East Asia. However, there are other haplogroups (6.79% in total) (E-SRY4064, C5-M356, G-M201, H-M69, I-M170, J-P209, L-M20, Q-M242, R-M207 and T-M70) detected primarily in northern East Asian populations, and were identified as Central-South Asian and/or West Eurasian origin based on the phylogeographic analysis. In particular, evidence of geographic distribution and Y-STR diversity indicate that haplogroup Q-M242 (the ancestral haplogroup of the native American-specific haplogroup Q1a3a-M3) and R-M207 probably migrated into East Asia via the northern route. The age estimation of Y-STR variation within haplogroups suggests the existence of post-Glacial (∼18 thousand years ago, kya) migrations via the northern route as well as recent (∼3 kya) population admixture. We propose that although the Paleolithic migrations via the southern route played a major role in modern human settlement in East Asia, there are ancient contributions, though limited, from western Eurasia which partly explain the genetic divergence between current southern and northern East Asian populations.

アブストラクトにも書いてありますが、ここでいう「北ルート」は
・E系統
・F系統(G,H,I,J)
・K系統(L,T)
・P系統(Q,R)
などの、ヨーロッパや中近東、中央アジアあたりで多い系統。

C,D,N,Oの各系統は「南ルート」とされています。

論文は有料ですが、付録のデータはダウンロードできます。

河南省にRの人が結構いるのが興味深いです。開封には、ユダヤ教徒のコミュニティもあるそうですから、何らかのかかわりがあるのかもしれません。

ハプログループO2bについて

みなさんよくご存知と思いますが。

Michael F. Hammer, Tatiana M. Karafet, Hwayong Park, Keiichi Omoto, Shinji Harihara, Mark Stoneking and Satoshi Horai
"Dual origins of the Japanese: common ground for hunter-gatherer and farmer Y chromosomes"
http://www.springerlink.com/content/p31g0300430k6215/

O2bが日本と韓国にほぼ限定されるとか、O2bは韓国から日本に入ってきたと思われるとか、本文でもはっきり書かれてます。

そんな常識的な話はさておいて、O-47z(O2b1)のネットワーク図で、ひときわデカイ○がありますね。O2b1の30%ほどがこのハプロタイプの○の中に入っちゃってるわけです。なんなんでしょう、コレは。